わたしたちは、食生活の文化的な背景をもとに『ヘルスケア』分野でSDGsを達成します。
フィールド栄養学で健康問題を探索
「食べること」には、単に必要な栄養摂取だけでなく、食習慣、文化、食品入手など、さまざまな側面があります。フィールド栄養学では、食と健康の疫学調査に加え、文化人類学的な視点で、地域の食、文化的背景、特性などを探求します。
育てたサツマイモを、歩いて3時間以上かかる市場まで運びます。奥に見える塔は、伝統的な部族戦争のときに使っていた見張り塔。
( ニューギニア高地、ダニ族)
オセアニア地域でみられる石蒸し調理。土器の発達しなかった地域での伝統的な加熱法です。
( ニューギニア高地、ダニ族)
もとは大麦が主食だったチベット文化圏のインド・ラダック地域の食にもコメが入ってきて、調理法が変化しています。
(ヒマラヤ高地、インド・ラダック地域)
ヤゴヤシの木から採れるサゴデンプンは、パプアの人たちの伝統的な主食です。
(ニューギニア沿岸部、アウユ族)
辺境地での生活習慣病の発生と食の変化を調査
生活習慣病の増加は世界的に深刻な問題の一つですが、開発途上地域では、ヘルスケアシステムや医療機関へのアクセスが未だ不十分であるため、治療にはより多くの課題を抱えています。このような地域でこそ予防への取り組みが重要で、まずは栄養摂取状況のアセスメントとその他の生活背景などの関連要因の分析が必要です。この調査では、都市化・グローバル化とともに今まさに生活習慣病が増え始めているヒマラヤの辺境地域、ニューギニア島のパプア州に焦点を充て、高齢者の生活習慣病や栄養状態、文化的背景との関連を明らかにしようとしています。
食生活と口腔状態が健康長寿に与える影響
本研究は、高齢者の「食と健康」に焦点を当てたものです。日本とタイの地域社会で実地調査を行い、身体機能だけでなく、うつ病やQOL(= Quality of Life )などの精神状態、栄養状態、社会的背景など、多面的なフレイル(=虚弱性)を明らかにすることを目的としています。さらに、高齢者の「フレイル」の認知についての調査は、人類学的なアプローチに通じており、これは地域的な傾向や特徴とともに、介護予防のための先駆け的な取り組み示すことができると考えています。
超高齢社会における孤食と共食
現代の日本では、独居高齢者の増加は避けられない現状にあり、それに伴って高齢者の孤食も増加すると考えられています。また、孤食の高齢者では、共食の高齢者に比べて、オッズ比2.7倍で食欲不振のリスクがあることも判明しています。日常生活への支援や介護が必要になった独居高齢者を支える仕組みの一つとして、介護保険制度下の介護サービスがあげらていますが、要介護認定を受けている高齢者にも高頻度の孤食がみられています。わたしたちは『地域での共食』に取り組み、食を通じて高齢者のソーシャル・インクルージョンを向上したいと考えています。
わたしたちは、近年急増している生活習慣病や超高齢社会の諸問題に着目し、それぞれの地域・文化に応じた「食からのアプローチ」を通して健康問題の解決を目指しています。