本田圭市郎 x SDGs

わたしたちは、関税以外の阻害(あるいは促進)する要素がどのような影響をもたらし、消費者や生産者へどのように影響を及ぼすのか調査しています。

WTO交渉やFTA締結により、国際貿易に対する関税障害の削減・撤廃が促進する一方で、非関税障害が重要視されています。わたしたちは、EU環境規制「RoHs指令」や「製品規格」、「食品安全基準」を研究対象とし、わたしたちの生活にどのような影響を及ぼしているのか実証的に評価・分析しています。

WTO(世界貿易機関)とは
各国が自由にモノ・サービスなどの貿易ができるようにするためのルールを決め、貿易障害を削減・撤廃するために貿易交渉を行っている国際機関です。
FTA(自由貿易協定)とは
幅広い経済関係の強化を目指して、貿易や投資の自由化・円滑化を進め、特定の国や地域の間で物品の関税やサービス貿易の障害などを削減・撤廃することを目的とする協定です。
非関税障壁とは

政府が国内取引される商品と外国間取引される商品を差別化するために関税以外の方法で直接・間接の選別的規制を行うことを言います。

RoHs指令とは
EUをはじめとする諸外国で課されている有害物質使用制限指令です。2006年7月以降、販売される大部分の電子・電気機器について、対象とする有害物質(鉛・カドミウムなど6物質)を規定値以上含む製品は市場で販売禁止になりました。また、輸入財も適用範囲内です。
本田先生

RoHs指令の影響によりEU域内では貿易額が増加する一方で、EU域外からの輸入は明らかに貿易障壁であることが分かりました。また、日本のMRL(農薬・動物用医薬品の残留基準)が年々厳しくなったことは安全性に不安のあった国からの輸入需要が喚起されていることが分かりました。このように、環境保護や安全性の向上のための政策について、良い面・悪い面の定量化とバランスの良い政策立案に取り組んでいます。

検疫措置は輸入障壁としてどの程度の大きさなのか

アメリカがWTOに日本産の輸入りんごに対する検疫措置に対して提訴しましたが、2度敗訴しています。そこで、わたしたちはアメリカ産と他国産で異なる等価関税率と、禁輸期間(~1994年)と輸入検疫期間(1995年~)で異なる等価関税率を定量分析しました。

等価関税率とは
数値化の難しい非関税障壁を、関税相当率として定量化したものです。
本田先生

検疫措置は100%以上の大きな輸入障壁となっているがわかりました。今後はサプライチェーンなどへの影響についても分析していき、世界貿易に係る適切な対策を分析・提言していきます。

EBPMで中心市街地活性化政策の政策評価を測る

日本では人口減少社会の中で効率的な財政運営を行いながら高い経済成長を達成するため、都市のコンパクトシティ化および中心市街地活性化政策が推進されています。実態は各地方自治体に任せられており、ローカル且つ独自性の高い政策です。わたしたちは、EBPMの考え方に基づき、それぞれの自治体の特性を可能な限り考慮しながら具体的に分析・評価しています。

EBPM(根拠に基づく政策立案)とは
政策の立案を経験則やエピソードに依存するのではなく、政策目的を明確化し客観的なデータ(根拠)に基づいたものとすることです。政策の因果関係を明らかにすることで、有限な資源を有効に活用して効果的な政策を立案することができます。
本田先生

とある都市の中心市街地活性化計画の(商店街アーケードの整備やイベントの積極的な実施、インフラの整備)効果は、歩行者やイベント参加者、交通機関の利用者数の一定数の増加傾向がみられ、集客の効果はある一方、商業面では有効ではなかったことが分かりました。これは人の往来が改善しても必ずしも購買行動を伴うものでないことを示しています。
このように、わたしたちは政策における因果関係の解明が経済発展へ繋がる架け橋となると考え、引き続き調査していきます。