馬越研究室 x SDGs

わたしたちは、『生体膜の基礎工学』でSDGsを達成します。

生体膜とは

細胞の中にはタンパク質や核酸などの「バイオ分子」が存在しており、それらの物理的な隔壁となっているのが生体膜である。わたしたちの身体は、60兆個の細胞から構成されていて、その細胞ひとつひとつに生体膜がある。

この「生体膜」の基本的な骨格は「リン脂質」と言われる分子から構成されており、これは石鹸(界面活性剤)の仲間である。1つのリン脂質分子には、水に溶けやすい構造と油に溶けやすい構造が共存するため、水中では、分子の塊である「ミセル」や、分子が秩序高く整列したナノ油膜から成るカプセル「リポソーム(≒モデル生体膜)」ができる。このような生体膜やモデル生体膜は、単なる「物理的隔壁」だと思われがちだが、環境に応じてしなやかに性質を変化させる、いわば外界と細胞との「インターフェース」としての役割が最近注目されている。

『生体膜・モデル生体膜』の本質に学び、グリーンイノベーションにつながるシステムを創る

工場などの化学プラントは、大量のエネルギーと資源を使って私たちの生活に役立っていますが、この”人工物”は地球環境を破壊してしまう問題があります。わたしたちは、生物のチカラ・戦略の本質に学んだ新しいモノづくり戦略を創り、環境問題の解決に取り組んでいます。

馬越先生

わたしたちは、生体膜を構成する「自己組織化膜」をコア材料として、タンパク質・核酸が示すような、効率が高く、選択的な「次世代バイオ触媒」「次世代バイオ担体材料」の開発に挑戦しています。

次世代DDSのためのTailer-Made型キャリアデザイン

これまで、リポソームは、医薬品をピンポイントで患部に送り込むドラッグデリバリーシステム(DDS)の運搬キャリアとして活用されてきました。わたしたちは、リポソームほか、いろんな自己組織化材料を「知る」ための方法(解析方法)を構築しており、DDS適切なキャリアを「デザイン」する方法の開発に取り組んでいます。

馬越先生

「難水溶性医薬品」や、近年注目されている「高分子量医薬品」(抗体、RNA、DNAほか)向けのDDSを対象に、Engineering Science視点から「Tailer-Made型」キャリアデザインを目指しています。

エンタルピー駆動からエントロピー駆動への挑戦

「化学プロセス」の戦略は、「相変化」(例 気体⇔液体)に伴うエネルギー(潜熱・顕熱)を活用するものが大多数です(エンタルピー駆動型)。一方で、コンパクトな空間に秩序高くバイオ分子を配列した「細胞」は、内在する「秩序構造」をモノづくりに活用しているミクロかつスマートな化学プロセスと見なすことも可能です(エントロピー駆動型)。「バイオ戦略」の本質を学び、それにInspireされた新しい戦略を構築することを目指しています。

馬越先生

「自己組織系(≒生体膜)」のEngineering Scienceを追究することで、短期スパンでは、「高機能性材料の開発」、長期スパンでは、技術革新の基盤となり得る「新戦略の構築」に貢献したいと思っています。