住村欣範 x SDGs

わたしたちは、人間にとっての食料との関係、そして、微生物(ウィルス含む)を通した人間と動物の関係を探索します。

新興再興感染症と食糧廃棄

食糧廃棄のおける畜産物の廃棄の原因の中のひとつに人獣共通感染症があります。これらは、口蹄疫、高病原性鳥インフルエンザ、豚コレラなどに当たります。1970年以降に新しく現れた感染症や制圧されかけていましたが再び流行するようになった感染症を新興再興感染症と呼びます。この新興再興感染症の多くは人獣共通感染であり、家畜を大量に殺処分することによる食糧廃棄は実は表裏一体であることがわかりました。

新興感染症が現れる背景は、人間の経済開発による野生動物との接触による変化、家畜化、そして近年の急速な関係の変化(工業的畜産・集約畜産)という人間と動物の関係の より包括的変化を背景として起こっていて、またこれらは、Society2.0 から Society4.0 までの社会の変化と多様化を経て生み出されてきたものです。

人獣共通感染症の問題を契機に人間と動物と環境を一体としてみるワンヘルスという考え方が現れました。人間にとっての環境と他の生物にとっての環境を複合的に一歩進めて人間の活動とその他の生物との関係を含めたワンエコロジーという より包括的なものに変えていく必要があると考えています。

Society5.0とは

Society5.0とは第5期科学技術基本計画において日本が目指すべき未来社会の姿。「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」であると定義されている。それ以前に、Society1.0=狩猟社会、Society2.0=農耕社会、Society3.0=工業社会、現在のSociety4.0=情報社会 の4つの社会類型あるとされる。

ワンヘルスとは

「人、動物、環境(生態系)の健康は相互に関連していてひとつである」という考え方

住村先生

新しい社会は、古い社会とは違った形と方法で、人間と動物、植物や微生物なども含めた生態系と物理的な環境との「関係」の中に、人間の社会が埋め込みなおされたものとして構想すべきと提言します。

人獣共通感染症の出現を招く家畜の生産と消費についての探索

わたしたちは、人獣共通感染症のひとつである鳥インフルエンザを、細菌については薬剤耐性菌を主な対象として、生物がもつ環世界(ユクスキュル)的な視点から考察して、人間の命とそれ以外のいのちとの非対称な関係性を問い直します。

環世界とは

すべての動物はそれぞれに種特有の知覚世界をもって生きており、その主体として行動しているという考え。ユクスキュルによれば、普遍的な時間や空間、環境も動物主体にとってはそれぞれ独自の時間・空間として知覚されている。動物の行動は各動物で異なる知覚と作用の結果であり、それぞれに動物に特有の意味を持っているといわれている。

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2020年に起こった鳥インフルエンザの発生

2020年から2021年にかけての冬、日本の多くの地域で鳥インフルエンザが発生しました。幸い人間への感染が起きていませんが、感染対策として殺処分は、11月上旬に香川県で始まり、年が明けた1月には千葉県で一度の規模としては過去最多になる114万羽の鶏が殺処分され、総数は既に600万羽を超えています。また、世界的なパンデミックの年に鳥インフルエンザが日本で多発したこと、初めに鶏への感染がおこったのが過去に例がほとんどなかった香川県であったことは重要な検討課題です。

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鳥インフルエンザの蔓延と殺処分の問題提起
  • 食糧廃棄という経済的な非効率
  • 工業的家畜生産における「密飼い」の感染症に対する脆弱性
  • 殺処分や処分以前の飼育方法についての倫理上の問題
  • 飼育と栽培という文明の基本にある人間と生物の関係
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わたしたちの提言

Covid-19の蔓延の中で浮き彫りになった「密」という概念は、人間の社会の在り方だけでない、それが存立している人間と生物の関係についても、根本的な見直しが必要です。

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わたしたちがやるべきこと

2020年の秋から日本でかつてない規模で蔓延した鳥インフルエンザについては、ウィルスが養鶏場に伝播するまでの要因として、気候変動で渡り鳥の飛行ルートが変わったこと、パンデミックで人間の行動様式が変わったことが関連している可能性があります。今のところ、私たちが注目しているのは、渡り鳥が紫外線の見える目を使って、どのように飛来する場所を見つけ、そこに降りてきているかということです。

今後は、これらの課題について、人間の視点から因果論的に追及するのではなく、「鳥の目」で香川県と日本という環境を見ることについて理解を深め、それを応用する過程で人間と生物の関係について新たな視点で考察していきます。

具体的には、渡り鳥の目で見えていると思われる視界情報を人工知能に学び取らせ、精度の高い鳥インフルエンザ予防警戒システムを作ることを考えています。

住村先生

「鳥の目」から見た環境は、人間と他の生物が対称的な関係を持って構築している世界観を取り戻す第一歩です。わたしたちは、畜産農家の経済的な損失と家畜の殺処分を回避する具体的な方策を提言すると同時に、人間中心主義的な世界観を再構築します。